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2019年6月7日(金) ≪「おかげ犬」ってご存知ですか?≫

最近或る有名な小説家の講演会で面白い話を聞いたのでご披露しよう。それは、江戸時代の話です。世の中が平和になり、旅も楽しめるようになった江戸期の人々は、「一生に一度はお伊勢参り」をしたいと考えていたようです。現在でも800万人が参拝すると言う「お伊勢さん」、当時は「入鉄炮に出女」と言って、関所が江戸に持ち込まれる鉄炮(「入鉄炮」)と、江戸を出る女(「出女」)を厳しく取り締まったことが知られています。入鉄炮は江戸の治安維持のためであり、出女は江戸屋敷に人質として置かれた大名の妻女が変装して領国に脱出するのを防止するためでした。但し、女性でも「お伊勢参り」すると申告すれば比較的簡単に江戸から出られたと言います。

そこに、「嘘のような誠の話」が伝わっています。年を取って歩くもがおぼつかず、路銀にも乏しいお年寄りが、飼い犬に「お伊勢参り」を託したというのです。どうしたかというと、首にその旨書き付けた木札を括り付け、犬の路銀をぐるっと巻いて送り出したのです。同じく伊勢方面を目指した人々はびっくり仰天すると同時に感心し、「おおっ、あの犬はお伊勢参りだ!」、「てえしたもんだよ、えらい犬じゃあねえか」、「ありがてえ。ありがてえなぁ……こんな犬を見るなんてありがてえことだよ」と言って、路銀を巻き上げるどころか、犬を呼び寄せ、首の周りに銭を与えてやる者もいたというのです。
犬はそうしてトコトコと、伊勢参拝の人にくっついて適当な宿まで行きます。(写真上は「おかげ犬」の石像)

宿の者も、暖かく犬を迎えてやりました。迎えた人は、首から餌代を取り、犬に餌を与え、また心付けの銭を巻いてやるのです。時には首に巻く銭が、ずっしりと重たくなることも。そうすると、親切な誰かが銀に替えてやることも有ったというのです。ホントかね?「おかげ犬」と言うらしいのですが、これが事実としたら「忠犬ハチ公」並みの美談ですよね!初めのうちこそ珍しがられていたのですが、時代が経つとドコの地域でも、お伊勢参り経験がある犬がいたというのです。いかに江戸期が太平の世だったとしても、我らが祖先の気質を知る上にも貴重で微笑ましい歴史的光景ですよね。何とも『ワンダフル』な話ではありませんか‼